フォルクスワーゲンは、同社で最も小さいSUV「T-Cross」を10月に開催されるパリモーターショーでワールドプレミアすることを発表した。T-Crossは6代目ポロをベースとしたコンパクトSUVであり、ゴルフがベースとなっているT-Rocの弟分にあたる。
最新のポロは、目をつぶって助手席に座っている限り、ゴルフに乗っていると錯覚してしまうほど進化している。このポロがベースとなっているだけあって、そのクオリティーは折り紙付きだろう。
T-Crossの導入により、ワーゲンはT-Roc、ティグアン、トゥアレグと共に充実したSUVラインアップを持つことになる。ちなみに、T-Crossの欧州市場でのライバルは、シトロエンC3 Aircross、セアト Aronaとなる。
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▶ポロよりも大きなボディ
全体像は分からないものの、ワーゲンが公開したT-Crossのリアエンドのデザインを見る限り、ボディの端から端まで直線的に伸びたシャープな印象のテールライトと、SUVの力強さをアピールした大きなホイールが目を引く。
もっとも、迫力のある足元と分厚いバンパーは市販モデルでは少し大人しくまとめられるようだが、ポロよりも50mm近く長い4,107mmのボディはレッグルームとラゲッジスペースにゆとりを生み、コンパクトとはいえSUVに恥じぬ居住性と実用性を備えるようだ。
そのためだろうか、ベースとなるポロよりも全体的に大柄なボディとなる見込みだ。スタイリングやボディの実用性においては、一昔前の「クロスポロ」よりも明らかに洗練されたモデルとなりそうだ。
▶カジュアル重視のプラットフォーム
プラットフォームは「MQB A0」を採用し、パワートレインはガソリン、ディーゼル、プラグインハイブリッドに対応する。ガソリンのエントリーモデルは、1.0ℓ3気筒ターボ(65ps:欧州仕様)となることが濃厚だ。トランスミッションは、7速DSGか6速マニュアルが組み合わされ、駆動方式はFFのみとなる。
ここで、多くの方は「FFのみ?」と疑問をお持ちではないだろうか。
SUVであるにもかかわらず4Motionが設定されないことについて、ワーゲンは4Motionの搭載に伴うコスト増を販売価格に転嫁したくないとのことであるが、4WDによる悪路走破性が脇に置かれたSUVというのはSUVと言えるのか、疑問が残る。
しかし、少し立ち止まって考えると、コンパクトSUVというクルマは若い夫婦やカップルをターゲットとした、より都会的でカジュアルなクルマと捉えることができるかもしれない。想定される顧客の多数派にとって、本格的な悪路走破性は重要ではないのかもしれないのである。
顧客がコンパクトSUVに求めるのは、普通のコンパクト車にはないアクティブなデザインと週末のレジャーを存分に楽しめる実用性というところか。となれば、極めて完成度の高いワーゲンのFFで十分に対応できる範囲であり、4WDはオーバースペックとも考えられる。
釈然としない部分は残るが、これをもって、一応の解としておこう。
一方、T-CrossへのGTI導入には意欲的で、主力モデルの発売後にポロGTIの2.0ℓ4気筒ターボ(200ps/320Nm)を搭載したT-Cross GTIが登場する可能性は高い。T-Cross GTIはポロよりも大きく、同じくらいパワーがあって速いとなると、なかなかの人気モデルになるのではないだろうか。
▶勢いづくコンパクトSUV市場
ここ1~2年のうちに、コンパクトSUV市場は急速に成長している。そして、今後数年の間に、現状よりコンパクトなフルEVのミニカントリーマン、日産ジューク、レクサスのコンパクトSUV「UX」などがデビューを控えているようだ。
まだ産声を上げて間もないコンパクトSUV市場に、ワーゲンがこのタイミングでT-Crossを投入することは先行者利益の獲得を意味し、今後の競争を有利に、いや、ワーゲンクオリティーで市場を間違いなくリードして行くこととなるだろう。
Photo source:Volkswagen
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