静なる美と過激な動の共演、ラピードS AMR登場

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6月13日、アストンマーティンはDB11のAMRに続き、ラピードSのAMRの販売を開始した。1台およそ2,840万円するラグジュアリースポーツカーは210台限定で、早ければ今年の秋頃からデリバリーが始まるという。

 

2017年のジュネーブモーターショーで発表されたコンセプトモデルと、ほぼ変わらない姿での量産化となったラピードS AMRは、ラピードSよりもパワフルで、より俊敏なフットワークと高い空力性能を備えるようだ。

 

「走る芸術品」と謳われるアストンマーティンであるが、2台のAMRモデルはこれまでのアストンマーティンにはないパンチの効いたカラーリングとなっている。それでは、サーキット志向のラピードS AMRのパンチの効き具合を見ていくこととしよう。

 

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▶レーシーなデザイン

外観のデザインは、コンセプトモデルに多少の変更が加えられており、特にフロントグリルのブラックメッシュのデザインや、「ザガート ヴァンキッシュ」に着想を得た丸いLEDのDRLを備えたフロントバンパーが印象的だ。

 

一方のインテリアは、ラピードSのエレガントな雰囲気から一転、レーシーな演出を施しており、センターコンソールはカーボンパネルで全体が覆われ、アルカンターラのスポーツシートが鎮座する。

 

これらはラピードSとして初めての採用らしく、AMR流のスポーティでアグレッシブな味つけへの意気込みを感じる。

 

▶バランス重視のパワートレイン

パワートレインは、ラピードSと同じ自然吸気の6.0ℓV12であるが、インテークマニホールドを大型化することでおよそ50ps近くパワーアップし、603ps/630Nmというサーキットでも十分に戦えるパワーを備える。

 

トランスミッションは、8速ATが組み合わされ、0-100㎞/h加速を4.4秒でこなし、最高速度は330㎞/hに達する。スペックが非日常クラスであることは確かだが、外観ほどのパンチはなく、最高速度もラピードSより3㎞/h速いに留まる。

 

これについて、アストンマーティンは、直線での加速や最高速度の更新よりもサーキットで速く走ることを最優先してチューニングした結果であるという。確かに、AMRとは「アストンマーティンレーシング」という意味であり、全てのチューニングはサーキットでいかに速く走るかに注がれるモデルなのだ。

 

▶空力性能の向上

サーキットで速く走るには、より大きなパワー、車体の軽量化、空力性能の向上が不可欠である。この点、車重はラピードSと同じことから、軽量化は潔く諦めているようだ。

 

一方で、空力性能の向上にはしっかりと手を入れているようで、フロントスプリッター、サイドスカート、リアのディフューザー等の装着は、高速走行での挙動を安定させる効果を生んでいるだろう。

 

ちなみに、AMR専用のエアロパーツ、ボンネット、プロペラシャフトをカーボン製としているが、軽量化には直結しておらず、あくまでAMR流のレーシーな演出である。

 

▶足回りはもちろん俊敏に

足回りは、ドイツのニュルブルクリンクで入念に鍛え上げられてきたようで、車高はラピードSより10㎜ローダウンされており、3ステージアダプティブダンパーは、より軽快なフットワークができるよう専用のチューニングが施されている。そして、アストン初となる21インチのホイールには、ミシュラン パイロットスーパースポーツが組み合わされる。

 

また、強力なカーボンセラミックブレーキは、フロントが400mmディスクで6ピストン・キャリパーとなり、リアは360mmディスクで4ピストン・キャリパーとなる。サーキットでの強力なブレーキングを維持するため、ブレーキダクトとダストシールドが改良されたヴァンキッシュSのブレーキ冷却装置が備えられている。これにより、サーキットでも、よりコントローラブルなマシン操作が可能となる。

 

▶今後の展開

アストンによると、DB11とラピードSに続き、今後は全てのモデルにAMRモデルを導入するという。一方で、ラピードSは早くも2020年で終売となり、今後の4ドアモデルはアストン初のSUVとなる「DBX」へと引き継がれることとなる。

 

▶AMRに求められる明確な個性

アストンマーティンは、「走る芸術品」と称されるほどエレガントで美しい。それは、外から眺めても、ステアリングを握っても、アクセルを吹かしても美しい。

 

何とも繊細な美しさが散りばめられた特別なスポーツカーが故に、トップレベルのレースシーンでバリバリに鍛え上げた動力性能を誇るドイツとイタリアのハイパフォーマンスバージョンと比べると、アストン流のサーキット志向モデルには手探りの試行錯誤のようなものが感じられる。

 

今後、新しいAMRモデルの導入が重ねられていくにつれて、AMRの明確な個性が醸成されていくことだろう。

 

Photo source:ASTON MARTIN

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