いよいよ、今年の秋、フランクフルトモーターショーでお披露目が予定されている新型ゴルフ。1974年にデビューした初代から数えること、8代。およそ半世紀に渡り、フォルクスワーゲンの屋台骨として活躍してきた。
そんな生ける名車の頂点に君臨するのは、ご存知「ゴルフR」。2020年に発表が予定されているホットハッチ界のベンチマークは、さらなる進化を遂げて我々の目の前に現れる。
昨秋、ニュルブルクリンクサーキットで2度のテストを敢行したR420。一時はディーゼル不正問題でお蔵入りかと思われたが、昨秋のテスト走行で「R420計画」の健在ぶりが確認された。
しかしその後、「R420計画」の情報はピタっと鳴りを潜める。AUTOJACK一同、やはりお蔵入りかと思っていたところ、新型ゴルフRのさらに上の「ゴルフRプラス」という形で、現実化する可能性が出てきた。ライバルは、メルセデスAMG A45、メルセデスAMG A45S、アウディRS3。いずれも、400psレベルのスポーツカー級のスーパーホットハッチだ。
ゴルフファン、ホットハッチファン共に、その動向から目が離せない新型ゴルフR。
家族で乗れるスーパーカーは、どのようなパフォーマンスを披露してくれるのか。
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▶「Rプラス」の別次元のパワー
初代ゴルフのエンジンがアウディ製であったかのように、初代ゴルフRプラスに搭載予定のEA888型2.0ℓ4気筒ターボは、アウディがチューニングを手掛ける。
パワーは「R420計画」のベースとなった「R400コンセプト」と同等の、380ps~400ps/450Nmを発揮するという。マイルドハイブリッドによる出力強化は見送られ、従来通り内燃機関一本でライバルに勝負を挑む。
パフォーマンスは、0-100㎞/h加速が3.9秒。最高速度は280㎞/h。新型メルセデスAMG A45S(3.9秒、270㎞/h)と肉薄する。ここまでくると、もはや家族で乗れるスーパーカーではない。子供が泣き出してしまうどころか、ステアリングを握るお父さんの掌も汗だくになる速さである。
この驚速ぶりを支えるべく、電光石火の7速DSGを介して、最新の4MOTIONで四輪全てを駆動する。XDS+とESCスポーツの協調により、連続するコーナーもアンダーステアを最小限に抑えて軽やかに攻略することができる。
ここまで高性能だと、当然に値が張る。しかし、無理してでも手に入れたくなるほど超魅力的であることは、誰しもが頷くところだろう。
「ゴルフRプラス」には、新型メルセデスAMG A45Sに対抗すべくドリフトモードの導入が期待されていたが、どうも導入は無いようだ。これまで培ってきたXDS+とESCスポーツの協調をさらに磨き上げることで、高速コーナーでも意のままにかつ愉しくマシンを操れるという自信の表れなのだろう。ドリフトモードの不採用は仕方ないにせよ、4WSが採用され、より軽快で気持ちのいいコーナリングを期待していたのだが...この四輪操舵の採用もないとのことだ。AUTOJACK一同、残念の極み。
どうせ高いのである。ならば、アクラポヴィッチ製のエキゾーストシステムを標準装備にしてもらいたい。あの官能的な音色に酔いしれることがきることこそ、ゴルフRプラスの特典として相応しいと思う。
▶気になる新型ゴルフR
新型ゴルフRは、2.0ℓ4気筒ターボを搭載。パワーは現行よりも30ps以上アップの333psになると思われる。トランスミッションは7速DSGが組み合わされ、4MOTIONで四輪全てを駆動する。もちろん、俊敏なコーナリングを実現すべく、XDS+とESCスポーツも搭載される。
パフォーマンスは、0-100㎞/h加速が現行の4.6秒からわずかに速くなるだろう。ハードコアな「ゴルフRプラス」の数値を見てしまうと物足りなさは否めないが、公道で走るには十分に速い。と言うか、このパワーとパフォーマンスがあれば、お釣りがくるくらいに大満足である。
そして、ゴルフのパフォーマンスモデルと言えば「GTI」である。究極のパフォーマンスという意味では、ついつい「R」や「Rプラス」に目が行ってしまうが、世界中のファンの数は圧倒的に「GTI」が多い。そんな次期「GTI」のハイパフォーマンスモデルは、現行の「ゴルフ GTI TCR」の290ps/370Nmを超える300ps/400Nmのパワーを備えると言われている。
VWとしては「R」や「Rプラス」よりも「GTI」の方が明らかによく売れるモデルであり、オーナーからしても手に届く極めて現実的な「ホットハッチ」でもある。そういう意味では、VWが次期「GTI」について最新技術の出し惜しみをすることは考え難い。つまり、次期「GTI」も相当に魅力的なクルマとして現れることは間違いないだろう。今年のフランクフルトモーターショーはもちろん楽しみだが、来年のフランクフルトモーターショーも楽しみでならない。
▶見た目もアグレッシブな「Rプラス」
猛烈なパワーを秘める「ゴルフRプラス」。エンジンはアウディがチューニングし、走りの生命線である足回りはフォルクスワーゲン・モータースポーツが担当し、R400とゴルフTCRのノウハウを惜しげもなく投入するという。毎度の如く、走りのセッティングはポルシェが担い、数値に表れない微細なところを完璧に仕上げる。つくづく、凄いクルマだ。
フォルクスワーゲングループ挙げての超高性能ファミリーカーは、見た目も相当にアグレッシブになるようだ。本格的なサーキット走行にも対応する「ゴルフRプラス」は、ダイナミックな走りを実現すべく、フロントトラックがゴルフRよりもワイド化されるという。フロントアクスルの挙動を安定させるべく、フロントウィングも大型化され、一目で「ゴルフRプラス」と認識できるような違いを纏うようだ。
▶今後の展開
新型ゴルフRは、ドイツのブラウンシュヴァイクにあるフォルクスワーゲンR&D本部で開発が進められている。ブラウンシュヴァイクと言えば、ドイツで最も歴史の長いブラウンシュヴァイク工科大学があり、ドイツの科学技術の中心でもある。そして、「ゴルフRプラス」も、この科学技術の中心で、極秘裏に最新の技術を総動員して開発が進められている。
気になる「ゴルフRプラス」の価格は、RS3と同等のおよそ770万円ぐらいになりそうだという。性能を見る限り、超魅力的なのは間違いない。しかし、現実問題として、800万円近いゴルフを買おうと思うお客がどれだけいるだろうか…
この点、フォルクスワーゲンは、新型ゴルフRのパフォーマンスを劇的に向上させない理由として、パフォーマンスの向上による値上げが顧客離れにつながると考えている。現在、ゴルフRは5万ユーロ(およそ630万円)以下の価格帯に属しているが、値上げにより上の価格帯に移行すると、およそ半分の顧客を失うという社内データがあるという。なので、通常の新型ゴルフRは値上げがあるとしても10万円から20万円程度かと思われる。そして、800万円近い「ゴルフRプラス」は、このまま順調に発売にこぎつけたとしても、あくまで「特別限定モデル」という位置づけで、フォルクスワーゲンの技術力を外部にプレゼンするモデルに留まると思われる。
新型ゴルフRと「ゴルフRプラス」の発売予定時期は、2020年から2021年。
それにしても、800万円はキツイ。お父さんには日々の節約でも、間に合わない…
Photo source:Volkswagen
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