最新型の8代目911は、「最新こそ最良」を地で行く進化を遂げた。よりパワフルで、より速くなった8代目911。洗練を極めたスポーツカーの走りとは。

▶熟成と進化が織り交ざった走り

8代目911は、45mm、ボディがワイドになっており、幅広になったトラックのおかげて、高速安定性と俊敏性が向上している。タイヤは、前後で異なるインチのホールを履き、フロントが20インチ、リアが21インチとなる。それに加え、後輪操舵が装着されるので、高速安定性と回頭性の良さは、熟成された上で、一段進化している。

もちろん、ステアリングへのフィードバックも磨き上げられ、今まで以上に雑味ないクリアな路面のインフォメーションを伝えてくれる。

そして、8代目911には、「ウェットモード」なる機能が新しく導入される。ウェットモードは、フロントホイールアーチに内蔵されている吸音センサーが、濡れた路面を感知すると自動でウェットモードを起動させる。ウェットモードが起動すると、ギアボックスとリアスポイラーの角度が自動調整され、車両の安定性を向上させる。「ウェットモード」によって、雨天での走行性能が一段と向上することは間違いない。

見た目も大きく変化した大型の可動式リアスポイラーは、ダウンフォースを従来よりも増大させ、高速&タイトコーナーなど、攻める走りで効果を発揮してくれるはずだ。

新型911の走りは、どんな路面状況でも安心して速く走れるというボトムアップと、高速走行での限界性能をさらに高める進化を実現し、完成度の階段をさらに一段上へと登った。

▶5連メーター健在のコックピット

8代目911のコックピットは、1970年代の911から着想を得たデザインのようだ。1970年代と現代の911のコックピットの違いを探し当てるには、「目を凝らして、進化を味わう」しかないのだが、5連メーターが健在であることと、デジタル化したことは、はっきりと分かる。

伝統の5連メーターは、中央のアナログ式レブカウンター以外はデジタルディスプレイに一新。ポルシェのインフォテイメントシステム「PCM」は、センターコンソールの10.9インチのタッチスクリーンに搭載される。タッチスクリーンが、現行の7インチから10.9インチへと拡大することで、マカンのように、エアコン送風口がタッチスクリーンの下へと移動。

もはや、パドルシフトをメインで操作してくれと言わんばかりのトグル式スイッチ風のギアレバーは、賛否が分かれるところ。一方、ドライブモード切替のダイアルを備えたステアリングは、やはりカッコいい。

ポルシェは、純粋なるスポーツカーブランド。ドライバーが自らの意思でクルマを操作することと、伝統の5連メーターだけは手放さない。

▶ポルシェらしい運転支援装備

911に運転支援装備なんて必要あるのか？という声が聞こえてきそうだが、安全性の確保という観点から、ポルシェも「自動緊急ブレーキ」を8代目911に標準装備とした。

とはいえ、911だけに、アダプティブクルーズコントロールやナイトビジョンカメラなどの贅沢装備は、オプションとなっている。911のアイデンティティーを護るべく、ポルシェらしい英断だ。

運転支援装備以外のデジタルサービスではあるが、ドライブでの小旅行の計画をサポートしてくれる「ロード トリップ」、ポルシェオーナーの日々の生活に有益な情報提供をしてくれる「360＋」というものが、PCMに用意される。

▶今後の展開

受注は既に開始されており、カレラS がおよそ1,540万円からで、カレラ4Sが1,644万円からとなる。欧州では、来春からデリバリーが開始される。

日本での価格や導入時期は、まだアナウンスされていない。

もちろん、GTSやターボなどのハイパフォーマンスモデルも遅れて登場するが、話題のPHVモデルの導入は、だいぶ先の2022年頃になりそうだ。

▶8代目911に想うこと

ウィスキーを嗜む方はお分かりだろう。熟成期間の長いウィスキーほど、あたりがまろやかで、懐が深い。ガツンと来るピートで有名なスコッチウィスキーの「タリスカ―」でさえ、18年物となると、香り、舌触り、そして味がまろやかなハーモニーを奏でてくれる。目をつぶって味をかみしめた後、静かに、「うまいっ」と唸ってしまうのだ。

時を経ることで、熟成され、洗練され、揺るぎない一つの塊となる。そして、語りかけるかのように人に寄り添ってくれる。しかし、その孤高の個性は、泰然と大地に根を張っている。911も、しなやかで揺るぎない個性を放ち続ける「不朽の名作」であると、つくづく想う。

Photo source：PORSCHE