7月25日、ポルシェは上海で大幅にフェイスリフトしたマカンを発表した。発表の場が中国であるのは、マカンが世界一売れている国だからである。
マカンは2014年のデビュー以来、世界中でおよそ35万台以上の販売実績を誇るポルシェのコンパクトSUVである。
今回のフェイスリフトでは、デザイン、快適性、コネクティビティ、ドライビング性能を含むあらゆる要素をブラッシュアップし、コンパクトSUVマーケットでのスポーツモデルとしての地位を不動のものとしたいようだ。
全方位で大幅なリファインが施されたマカン。
早速、その改良ぶりを見ていくこととしよう。
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▶勇ましくも優美なエクステリア
従来モデルよりもスポーティになったルックスは、これまで以上にポルシェデザインの原点である911や918の要素が取り入れられたことにある。そして、その磨き上げられたスポーティさは標準装備となる前後のLEDライトで一層引き立てられている。
リアエンドの一直線に伸びた立体的なLEDテールライトは、最新のカイエンを彷彿とさせ、スポーティなSUVを求める顧客にはとても強く突き刺さるデザインではないだろうか。
なお、オプションのポルシェ・ダイナミック・ライトシステムプラス(PDLS)を選択すると、車速や路面状況に応じてライトの照射を最適にコントロールしてくれるそうである。
一方、ボディは従来よりもワイドになり、カイエンのような勇ましい存在感を手に入れた。同時に、リアにかけての流線形のフォルムと911を連想させるショルダーラインが、スポーツカーのような曲線美を構築している。
足元の新デザインのホイールは、その体躯からは想像できないような軽快なフットワークを予感させる。よりスポーツドライビングを楽しみたいオーナーには、オプションで20インチと21インチのホイールが用意されているそうだ。
ボディカラーには、4つの新色が追加されている。マイアミ・ブルー、マンバ・グリーンメタリック、ドロミテ・シルバーメタリック、クレヨンとなる。最後のボディカラーのネーミングにはちょっと拍子抜けしてしまうが、逆にどんな色なのか興味も沸いてくる。
▶よりスポーティに仕立てられたインテリア
インテリア最大の注目点は、大型化されたタッチスクリーンとオプションの911譲りのGTスポーツステアリングである。
従来の7インチから11インチへと大型化したタッチスクリーンには、ポルシェのインフォテインメントシステム「ポルシェ・コミュニケーション・マネジメント(PCM)」が搭載されており、ボイスコントロールや、リアルタイム渋滞情報が表示される「HERE」のオンラインマップ搭載のナビゲーションシステムが備わる。
この大型のタッチスクリーン導入により、センターコンソールのエアコン送付口がカイエンと同じように下へと移動した。
全体的には、カイエンを一回り小さくしたようなインテリアで、スポーティかつ上質な空間であることは間違いない。
オプションのスポーツクロノパッケージを選択すると、スポーツレスポンスボタンを備えたGTスポーツステアリングがコックピットに収まる。エクステリア以上にオーナーを喜ばせるレーシーな演出だ。ステアリングを握るたび、何とも言えない高揚感が湧き上がることだろう。
一方、快適装備もアップデートされており、ヒーテッドガラスや、室内の空気をフレッシュに保つイオン化装置内蔵の空気清浄機がオプションリストに並ぶ。
そして、4色追加されたボディカラーに合わせてであろうか、新しいインテリアパッケージも充実が図られ、これまで以上にカスタマイズの幅が広がっているようである。
これまで以上のスポーツカーライクな味つけと、「自分好みの一台」を可能にしてくれるカスタマイゼーションで、マカンの魅力は一層の高みへと登っていく。
▶オールダウンダーを極める足回り
足回りは、マカンのキャラクターをライバルよりもさらに際立たせるため、軽く剛性の高まった新型のサスペンションスプリングが装着され、これまで以上に俊敏で軽やかな身のこなしが実現されているという。
また、前後輪で異なる幅のタイヤを履くことで、ハンドリングはよりシャープなものになり、SUVとは思えぬドライビングプレジャーを味わうことが可能だろう。もちろん、ポルシェの4WDである「ポルシェ・トラクション・マネジメント(PTM)」により、悪路走破性の向上も抜かりが無い。
その証拠に改良版マカンでは、オフロード走行の記録と分析が携帯電話上のアプリできる「オフロード・プレシジョン・アップ」を用意しているのである。
オフロード・エンスージアストの方には、是非試してもらいたい機能の一つだ。
このように、マカンは高速走行時の安定性としての4輪駆動と、悪路走破性としての4輪駆動が楽しめるとても欲張りなポルシェと言えるだろう。もちろん、家族との遠出も快適にこなす、正真正銘のオールラウンダーだ。
▶ポルシェらしからぬ、でもありがたい運転支援装備
新しく導入された渋滞アシストは、アダプティブクルーズコントロールとレーンキープアシストにより、時速60キロまでなら、アクセルとブレーキ操作だけでなく、ハンドル操作も自動で行ってくれる部分的な自動運転となる。
運転をクルマに任せるとはポルシェらしからぬ考えではあるが、さすがに疲労困憊で渋滞に捕まった時には、この渋滞アシストはとても役に立つ有難い存在となるだろう。
▶まだ公表されていないパワートレイン
残念ながら、パワートレインは9月から導入される新排ガス規制WLTPの適合に向けたテストが遅れているため、まだ公表されていない。
ここからは推測にはなるのだが、エントリーモデルから見ていくこととしよう。
パワートレインは、ディーゼル(欧州仕様)がラインアップから姿を消し、エントリーモデルは現行と同じ2.0ℓ4気筒ターボとなる。マカン Sは、3.0ℓV6ツインターボがおよそ15psアップの355psへとパワーアップすると予想される。
そして、マカン ターボは、RS4に搭載される2.9ℓV6ツインターボが移植されると見られ、パワーは現行のマカンターボ・パフォーマンスを凌ぐ450psに達するのではないかと思われる。
当然のことながら、0-100㎞/h加速もスポーツカー並みになることは必至であるから、全貌が明らかになった暁には、その数値に怯んでしまうかもしれない。
全てのモデルのトランスミッションは、7速ティプトロニックSが組み合わされるようだ。
残念なお知らせとしては、今回の大幅改良に伴うハイブリッドモデルの導入は予定されていないということである。
理由としては、マカンは先代Q5のプラットフォームを採用しており、このプラットフォームではハイブリッドに必要なサイズのバッテリーを搭載することができないからだという。
したがって、ハイブリッドモデルを希望しているオーナーは、フルモデルチェンジをもうしばらく待って頂くしかないようだ。
▶今後の展開
販売価格や時期についはまだ明言はないが、価格は最新のテクノロジーが多数導入されているので値上がりは必至と思われる。販売時期については、今年の秋から年末頃になると予想され、日本導入は来年になると思われる。
▶コンパクトスポーツSUVとは
4年ぶりのマイナーチェンジが施されたマカン。
すべてにおいて洗練されたというのがしっくりくる出来栄えである。
ライバルとされるGLCクーペ、X4、Fペース、Q5、ステルヴィオもなかなかこのキャラクターとクオリティーにはついていけないのではないだろうか。
コンパクトスポーツSUVとしては、群を抜いたオンロード性能を見せるマカンであるが、今回の正式発表がなされる約10日前、アフリカ南部のレソト王国にある海抜3,400mの高地で、砂ぼこり舞う砂利道や細く険しい山岳路という悪路を次々と走破し、コンパクトSUVとは思えぬ本格的なオフロード性能を示して見せた。
ポルシェは、この発表でマカンの比類ない全方位の性能が覚醒したことをライバル達に見せつけた。
群を抜いたオンロード性能、本格的なオフロード性能、家族がくつろげる快適性、一度見たら忘れられないオーラを放つ存在感。
常に限界を超えることで新型モデルを世に送り出してきたポルシェだからできるクオリティーであり、やはりこの高みには、そうやすやすとは辿り着けないだろう。
Photo source:PORSCHE
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