俊足の巨人、ベンテイガ パイクスピーク発表

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6月25日、ベントレーは同社SUVのベンテイガがパイクスピーク国際ヒルクライムレースと同コースでの市販SUV新記録を樹立したことを記念して、10台限定の「ベンテイガ パイクスピーク」を発表した。

 

ベンテイガ パイクスピークは、アメリカのコロラド州にある標高差およそ1,500mの過酷な山岳コースを、10分49秒9という息を呑む速さで駆け登った。

 

ドライバーのリース・ミレンは2.5t超もの巨体を巧みに操り、平均時速107㎞/hで156もあるコーナーを制したのであるから、そのドライビングには驚くばかりである。とはいえ、ベンテイガの桁違いのパフォーマンスも同時に証明されたと言える。

 

ちなみに、これまでの市販SUV最速記録は、2013年にレンジローバースポーツが樹立した12分35秒61というもので、平均時速はおよそ105㎞/hであった。レンジローバースポーツと比べると、如何に凄いタイムであるかが改めて分かる。

 

なお、レース仕様の車はほぼ市販車のままで、フロントシートがレース用のシートに変更され、後席は安全のため取り外され、代わりにロールケージが装着された程度である。車のパフォーマンスにほぼ関係のない変更に留まっていることから、ベンテイガがスーパーSUVであることに改めて頷くばかりだ。

 

それでは、その体躯には不釣り合いなほど速い、ベンテイガ パイクスピークを見ていくこととしよう。

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▶一度見たら忘れない外観

外観は専用の「ラジウム」というド派手なカラーリングが故に、ベントレーという印象よりもアラブの石油王が所有するカスタムカーという出で立ちである。さすがに、色のパンチが効き過ぎていることをベントレーも承知しているのか、ボディカラーには落ち着いたブラックも用意しているそうだ。

 

足元には、ボディ同色のラジウムをアクセントとする22インチのホイールを履く。そして、随所に施されたブラックのパーツが大柄なボディにキリッと引き締まった印象を与える。オプションのカーボンパッケージを選べば、カーボン製のエアロパーツで一層レーシーに仕立て上げられる。

 

とにもかくにも、この「ラジウム」という専用カラーは、一度目にすると忘れられない色である。

 

▶強烈なアクセントが刺さるインテリア

インテリアは、「キーライム」というボディと同じ色がドア、ダッシュボード、シートのステッチ、フロアマットのパイピングにあしらわれている。

 

アクセントカラーの「キーライム」は、その鮮烈な色合い故か、全体をシックにまとめているブラックとのコントラストが鮮やか過ぎるのを通り越して、アクセントカラーが脳裏に突き刺さり、全体はブラックのインテリアなはずなのに、あたかも全体が「キーライム」に彩られているかのように感じてしまう。

 

一方、ステアリング、ドア、シートの座面の両サイドにはアルカンターラが用いられており、快適さをくつろぎながら味わうベントレーではないと主張している。

 

そして、10台限定という特別感の演出として、助手席のダッシュボードのカーボンパネルの上に光り輝く「パイクスピーク」のロゴとコースのイラストが煌びやかに浮き上がる。

 

▶スーパーSUVの心臓

パワートレインは、6.0ℓW12ツインターボが608ps/900Nmを発揮し、ZF製の8速ATが組み合わされることで、怒涛のパワーは4輪全てを介して路面へと強烈に叩きつけられる。スーパーSUVベンテイガの動力性能は、0-100km/h加速を4.1秒でこなし、最高速度は301km/hに達する。この俊足ぶりは、並みいるスポーツカーに肩を並べられる驚きの速さである。

 

繰り返すが、「2.5t超のボディで」、である。

 

そして、注目すべき足回りの仕掛けは、エアサスと組み合わされる世界初の48Vアンチロールコントロール「ベントレー ダイナミック ライド」であり、2.5t超の大柄なボディを巧みにコントロールし、終始フラットな走りを実現する。

 

▶その他の専用装備

その他の専用装備としては、アクラポヴィッチ製スポーツエキゾースト、アダプティブクルーズコントロール、ヘッドアップディスプレイ、レーンキープアシスト、ナイトビジョンが備わる。

 

▶発売時期

発売は今年の8月からとなり、ヨーロッパとアメリカのみでの販売となり、日本への導入はないという。

 

▶ブランドの進化は、その真価を磨くことにある

ベントレーのような「超」が付く高級で高品質なクルマは、頻繁に買い替えたり複数所有したりするものではないという考えが頭の中に最初に浮かぶが、一目惚れするような性能ないしはデザインを備えていれば、そんな固定観念が一気に吹き飛んでしまうのも事実。

 

名だたる高級ブランドは、長く愛される高品質なクルマを作りつつも、一発で相手を悩殺するような魅力的なクルマを世に送り出すことで、ブランドの魅力や価値をさらに高める。

 

非日常的なパフォーマンスを秘めるクルマを開発することで、技術を磨き上げる。その非日常性に、人はどうも惹かれてしまう。整えられた社会システムにどっぷりと浸かった現代人は、普段は味わえない想像を超えた非日常性にスリルと興奮、無限の可能性を見出す。

 

ベンテイガ パイクスピークは、そんな人を惹きつける非日常性を見事に表現したクルマだ。

 

ただ上品で高級なだけではない。

 

そんな多面性を持つ奥深い個性を磨くことが、ブランドを進化させ続けるのかもしれない。

 

Photo source:BENTLEY

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