ポルシェは同社初となる4シーターEVスポーツカー「タイカン」を発表した。
タイカンという車名には、「若くて元気な馬」という意味が込められており、1952年以来続くポルシェのエンブレムの中央の跳ね馬こそ、タイカンのモデルとなっている馬である。
タイカンには、フラッグシップモデルの「ターボS」と、「ターボ」の2モデルが用意される。EVとはいえ、911などの内燃機関モデルと同じヒエラルキーでのモデル展開となる。
それでは早速、ポルシェがライバルに見せつける完成度の高いEVスポーツカー「タイカン」をのぞいて見るとしよう。
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▶タイカンの動力性能
タイカンは、コードネーム「J1」というポルシェのEVスポーツカー用の最新プラットフォームを採用しており、テスラモデルSと同じように2基の駆動モーターをそれぞれ前後のアクスルに配置し、通常のEV(400V)の2倍の電圧にあたる800Vのリチウムイオンバッテリーを車体中央部の床下に搭載する。この時点でいかにハイパーなEVスポーツカーであるかが分かるだろう。ちなみに、高電圧な800VのEVは市販車世界第1号だそうだ。
そして、2基の*PSMモーターの出力は、「ターボS」が625ps(460kW)で、オーバーブースト状態では761ps(560KW)を発揮し、最大トルクはなんと1,050Nm。とんでもないパワーをお持ちでいらっしゃる。0-100㎞/h加速は2.8秒と、こちらはアメリカの直線番長であるテスラ モデルS P100Dの2.7秒に及ばない。最高速度は、260㎞/h。しかしポルシェは、曲線番長対決ではテスラには負けない。そして、曲線番長こそ、真の王者なのだ。
閑話休題。「ターボ」は680ps(500KW)を発揮し、0-100㎞/h加速は3.2秒で駆け抜ける。最高速度は「ターボS」と同じ260㎞/hだ。
*PSM:永久磁石シンクロナスモーター
▶タイカンのハンドリングとフットワーク
タイカンは前後に駆動モーターを配置し、車体中央部に高電圧バッテリーを搭載するレイアウトとなっているため、理想的な前後重量配分と低重心を見事に実現。したがって、2,295㎏の体躯とはいえ911を凌ぐハンドリングとフットワークを実現しているのではないかと思われる。
前後アクスルに駆動モーターを搭載しているので、駆動方式は4WDとなり、あらゆる路面状況で高いパフォーマンスを発揮するのは折り紙つきだ。この4WDには、2速のトランスミッションが組み合わされている。1速は発進や加速用に、2速は省エネや高速走行用となる。内燃機関のクルマからすると、想像がつかないくらいギアの数が少ない。ハンドリングとアクセルワークだけでドライビングを愉しむのがEVなのだろう。
スーパーデジタルなタイカンには、ポルシェ4D シャシーコントロールという足回りの統合制御装置が搭載されている。この装置は、すべてのシャシー機能をリアルタイムで最適に制御する。つまり、エアサスに始まり、「PASM」(ポルシェ・アクティブ・サスペンション・マネージメントシステム)、「PTV Plus」(ポルシェ・トルク・ベクトリング・プラス)、「PDCC Sport」(ポルシェ・ダイナミック・シャシー・コントロール・スポーツ)、電気機械式ロール抑制システムが、路面状況や走行状況に応じて常に最適にコントロールされるのだ。ここまでくると、ドラテクなんぞは必要ないかも…と思ってしまう。
タイカンの凄さはブレーキにも表れている。日常走行でのブレーキ操作のおよそ90%が、油圧式ホイールブレーキを作動させることなく、電気モーターのみで作動する。相当に強力かつ瞬時のブレーキングが可能となろう。
▶もはや心配いらずの航続距離
EVの最大の課題である航続距離は、1回の充電で「ターボS」が最長412㎞、「ターボ」が最長450㎞の走行が可能という(WLTP基準)。バッテリー性能もさることながら、美しい流線形が生み出すCd値0.22という数値も航続距離に寄与していることは言うまでもない。
ただ、航続距離は、走行状況によって左右されるところが大きいので、実際のところはメーカーの公表値通りという訳にはいかないだろう。とはいえ、一度の充電で確実に300㎞以上走行してくれるなら、これまでEV最大の懸念であった航続距離は、もはや問題ではないかもしれない。心配ご無用の航続距離とくれば、ロングドライブに出たくもなる。タイカンはスーパーカーの性能を持ちながらも前後に荷室を備え、フロントは81ℓ、リアは366ℓというラゲッジスペースを確保している。タイカンは、実用性も備える死角ゼロのEVスポーツカーとも言える。
さて、航続距離を左右する800Vの高電圧リチウムイオンバッテリーは、高出力充電ネットワーク(欧州だと「イオニティ」)の直流(DC)充電を使えば、わずか5分で最大100km航続可能な電力を充電できる。パフォーマンスバッテリーとリチウムイオンバッテリーの蓄電容量は、最大93kWh。バッテリー容量を80%まで充電するのに必要な時間は、270kWの急速充電で22分半だ。自宅で充電する場合、最大11kWの交流(AC)充電となる。
高電圧バッテリーとEVパワートレインで業界随一の技術力を持つEVハイパーカーブランド「リマック」との技術提携により、タイカンを完成度の高いEVスポーツカーへと昇華させたポルシェは、リマック社の株式を買い増している。EVの心臓部であるバッテリーとモーターは、更なる研究開発で進化を遂げるであろう。
▶気になるEVサウンド
内燃機関のクルマは、エンジンに火を入れるなり心臓が鼓動するかのようにマフラーから甘美なる音を奏でてくれる。エンスーにとっては、エンジンサウンドこそ最高のBGMだ。さて、EVはこの点どうだろうか。タイカンの動画を拝見するに、EVサウンドがそう悪くはないのだ。「ありかも」と思ってしまうのだ。スーパーチャージャーの「ヒューンッ!」という機械音に近いのだが、SF映画の宇宙船が出すような未来的な音がなかなかいい味を出している。
EVに関しては、最後にどうも音だけが大丈夫かと気になっていたのだが、AUTOJACK一同はあっさりとポルシェの技術力によって黙らされてしまった。さあ、皆さんはどう思われるだろうか、EVサウンドを。
Source:PORSCHE
▶ポルシェの本気のEVシフト
ポルシェは2022年に向けたEV推進計画について、当初予算の2倍以上となる約7,900億円(2018年7月30日時点)以上を投じるようだ。そしてこの巨額の資金は、タイカンの開発はもちろん、現行モデルのハイブリッド化やEV化、生産工場の拡大、EV用の新しいテクノロジーの開発、急速充電ステーションの整備などに使われる。
巨額の資金とその使途、そしてEVハイパーカーブランド「リマック」の株式取得によるEV技術提携を勘案するに、ポルシェは間違いなくEVスポーツカーのリーディングカンパニーになるだろう。いやそれだけではない。タイカンは、EVスポーツカーのベンチマークになるような存在だと思う。
最後に、タイカンはツッフェンハウゼン工場で生産されるようで、タイカン生産に向けた工場の新設や既存施設の拡張が進められているようだ。タイカンをベースとしたクロスオーバーモデル、「ミッションE クロスツーリスモ」も控えているので、大規模な生産環境は急務なのだろう。
Photo source:PORSCHE
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