10月25日、ポルシェは、「911GT2 RS MR」で、ニュルブルクリンクサーキット北コース(全長20.6km)の市販車世界最速記録を更新した。
そのタイムは、「6分40秒3」。今年の7月に、ランボルギーニ アヴェンタドールSVJが樹立した世界最速記録の「6分44秒9」を、およそ5秒近くも上回る驚異的な速さだ。
さらに、昨年9月、911GT2 RSが叩き出した「6分47秒3」からすると、7秒も上回る。たった一年で、7秒もタイムを縮めるとは。一体、ポルシェは何をやったのだろうか。
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▶世界最速のスペックは、市販モデルのまま
昨年、今年と、2年連続でニュルの市販車世界最速記録を塗り替え続ける911GT2 RS。2017年に発売された当時のスペックは、何も変わっていない。
3.8ℓ水平対向6気筒ターボは、700ps@7,000rpm / 750Nm@2,500-4,500rpmを発揮。この驚異のパワーは、7速PDKで後輪のみに伝えられる。強靭な後ろ足でアスファルトを蹴り上げると、0-100km/h加速は、2.8秒。最高速度は、340km/hへと達する。
今回のタイムアタックも、この市販モデルと何ら変わりはない。
しかし、今回の世界新記録を更新したマシンは、「911GT2 RS MR」。最後の「MR」がどうも気になる。そう、この「MR」にこそ、速さの秘密が隠されている。
▶MR(Manthey-Racing )が握る速さの秘訣
「MR」とは、マンタイ・レーシング(Manthey-Racing )の略。マンタイ・レーシングとは、ポルシェが株式の51%を保有するポルシェ傘下のレーシングチーム。直近では、ポルシェと共に911RSRで、WECに参戦。一方で、ポルシェオーナー向けに、アフターパーツの販売やチューニングのサービスも提供するなど、チューニングメーカーとしての顔も持つ。さらに、ポルシェオーナー向けのレースイベントも手掛けている。マンタイ・レーシングは、ポルシェに心を奪われた「エンスーな職人集団」であるだけではなく、抜け目なくビジネスを展開する「企業」でもあるのだ。
今回のタイムアタックでは、911GT2 RSは、マンタイ・レーシング製の新型パフォーマンスキットを装着。故に、今回のマシン名は、「911GT2 RS MR」なのだ。
新型パフォーマンスキットは、ポルシェの911RSRや911GT3 Rで得られたノウハウと、マンタイ・レーシングのニュルでの豊富なレース経験を結集して製作された。主に、シャシーや空力にアップグレードが施されているらしいが、その詳細は、明らかにされていない。
ただ一つ確かなことは、「ニュルで世界最速記録を出すため」のセッティングであること。
「911GT2 RS MR」は、ドライバーの安全確保のため、マンタイ・レーシング製のレーシングバケットシートへと取り換えられている。それでも、車重は市販車と同じ1,470㎏。
もともと、911GT2 RSは、スーパーカーとは思えない扱い易さで、定評のあるクルマ。とはいえ、たった一年で、7秒もタイムを短縮した911GT2 RSのポテンシャルは、計り知れない。
今回ステアリングを握ったのは、ポルシェのテストドライバー兼エンジニアの「ラルス・ケルン」。
弱冠31歳の若者いわく、
マンタイ・レーシング製の新型パフォーマンスキットのおかげで、911GT2 RSのバランスは、とても良かった。
だから、新記録を狙うため、敢えてリスクを冒して、攻める必要がなかった。
ポルシェの社員だけに、
攻めなくても、市販車世界最速が出せる911GT2 RSは、すごいだろっ!
と言いたかったのだろう。
やはり、マンタイ・レーシング製の新型パフォーマンスキットは、相当に出来の良い「アフターパーツ」に違いない。911GT2 RSオーナーは、欲しくてたまらないだろう。
▶キング オブ サーキットの戦いは続く
2017年9月、911GT2 RS@6:47:3。
2018年7月、アヴェンタドールSVJ@6:44:9。
2018年10月、911GT2 RS MR@6:40:3。
再び、「イタリアの猛牛」が抜き返すか。はたまた、マクラーレンが、「6分43秒22」の記録を持つマクラーレンP1 LMのノウハウを引っ提げて、いよいよ、ニュル最速を賭けた戦いに挑むのか。ハイパーカーの「メルセデスAMGワン」や、「アストンマーティン・ヴァルキリー」も参戦を表明するのか。キング オブ サーキットの戦いは続く…
Photo source:PORSCHE
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