ブガッティは、現在開催中のパリモーターショーでシロンをベースにしたサーキット志向モデル「ディーボ」を展示している。ご存知の通り、ディーボは「超」が付くハイパーカーだ。その価格は、一台およそ6億5,000万円。
しかし、世界中に散らばる大富豪のブガッティ ファンによって、限定40台のフランス製ハイパーカーは、瞬く間に完売してしまった。
「商い」の観点からすると、高級車は利益率が良く、自動車ブランドにとっては、金のなる木だ。そんな高級車の世界の中で、最低価格が一億円越えのブガッティは、ずば抜けた利益率を誇る。ブガッティの上層部はもとより、親会社のフォルクスワーゲンも、笑いが止まらない左うちわのブランドこそ、ブガッティなのだ。
そんなブガッティは、直近のディーボの大成功と、同じVWグループのランボルギーニ初のSUV「ウルス」の成功に感化されたのか、新たなドル箱商品を見つけてしまったようだ。いよいよ、ブガッティが成長著しいSUV市場へ参入する案が急浮上しているのだ。
とはいえ、ハイパーカーブランドとしては、まずは屋台骨のハイパーカーのラインアップを充実させることが先決である。ハイパーカーの成功あっての、次なるSUVである。
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▶SUVまでの道のり①:サーキット志向モデルの拡充
ブガッティは、ディーボの投入によって、マシン開発の方向性として、直線での市販車世界最速を追求するという考えから、サーキットでの走行性能を極限まで高めるという考えへとシフトした。
その証拠に、シロンの最高速度は420㎞/hであったが、ディーボは、コーナリングスピードを向上させるべく、トップスピードを380㎞/hに抑えている。つまり、ブガッティの新たな探究心は、トップスピードではなく、コーナリングスピードに向けられている。
ブガッティの中で最速のコーナリングスピードを誇るディーボこそ、今後の新たなマシン開発の方向性を象徴するモデルだ。
ディーボに続くべく、シロンのサーキット志向モデル「シロン スーパーレジェーラ」、「シロンSS」の開発が進められているという。そして、シロン初のオープントップモデル「シロン アペルタ」も同様に開発が進んでいる。もっとも、アペルタは、サーキット志向モデルとなるかは定かではない。このような純粋なるハイパーカーのラインアップの拡充と成功が、ブガッティのSUV実現に向けた第一歩となる。
▶SUVまでの道のり②:パワートレインの電動化
今年9月から欧州で施行が開始された新排ガス規制「WLTP」、欧州各国で法整備が進む内燃機関の自動車販売禁止、EV普及への社会的な関心の高まりを背景に、これまで対極にいたブガッティも世の中の潮流には逆らえず、ハイブリッドをはじめとする電動化に本格的に取り組むようだ。
電動化の波によって、ブガッティは1,500psを誇る8.0ℓW16クワッドターボの今後の開発をしないことを発表し、事実上の廃止を決定した。
では、超俗的なW16に代わるハイパーカーの心臓部はどうなるのか。
この点、W16エンジンの後継の筆頭は、ベントレー ベンテイガなどに搭載されている6.0ℓW12ツインターボエンジンが濃厚だ。このW12にモーターを組み合わせたハイブリッドのパワートレインが、近い将来ブガッティの心臓部になりそうなのである。
ただし、バッテリーが軽量であることが条件になる。それもそのはず、W12に何基のターボを搭載するか分からないが、サーキットを制するには軽量化が必須である。ただでさえ重いバッテリーは、相当な軽量化が必要である。でなければ、パワートレインの重さが足を引っ張り、W16エンジンと同等のパフォーマンスを発揮することは難しい。
そんな中での一筋の光明は、ポルシェとEVハイパーカーブランドのリマックとの技術提携だ。これは、ポルシェがリマックの株式の10%を取得することで実現した。
ポルシェ、ブガッティ共に、フォルクスワーゲングループの一員である。ポルシェの最新EVに投入されるリマックの技術は、新たなハイパーカーを創ろうとするブガッティにとって、とても心強い。業界随一と評されるリマックの高電圧バッテリーの技術がさらに進化し、軽量化を今まで以上に推し進めることができれば、W12 + モーターのブガッティ製ハイブリッドハイパーカーが現実のものとなる。
▶SUVまでの道のり③:ブガッティ初のSUV、満を持して登場
ブガッティの柱であるハイパーカーの更なる成功と、電動化パワートレインの完成によって、ブガッティのSUV実現の地ならしは完了。
満を持して登場するブガッティ初となるSUVは、ハイブリッドのパワートレインを搭載し、サーキット仕込みの4WDは悪路走破性も備える。そして、これまで無縁だった実用性を手に入れる。価格は、やはり「ブガッティ プライス」、億を優に超えるだろう。それでも、売れる、即座に完売するに違いない。
ハイパーカーをベースにしたシューティングブレークを、SUVの前にワンクッション入れる案もあるようだが、ニーズが確実に多いSUVで一発勝負を掛ける公算の方が高い。
フェラーリ、ランボルギーニ、アストンマーティン、ブガッティとくれば、マクラーレンがSUVを創るかどうか気になるところだが、マクラーレンのSUVを期待する人がいるかは疑問だ。
とにもかくにも、VWグループは、ポルシェ、ランボルギーニというスーパーカーのアイコン的ブランドがSUVで大成功を収めている。成功のノウハウは揃っている。欲しがる人も世界中にたくさんいる。ブガッティのSUVには、その誕生前から輝く成功が見えているようでならない。
Photo source:BUGGATI
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