ブガッティの新戦略、トラック志向&ハイブリッド化

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ブガッティは、先月末にアメリカで開催された「クウェイ・モータースポーツ・ギャザリング」でシロンをベースとするサーキット志向モデルのディーボを発表した。

 

このディーボの発表について、ブガッティがサーキット志向へとそのラインアップを拡大したと受け止められた方も多いかと思う。しかし、ディーボの登場はラインアップ拡大を意味するのではないようだ。ブガッティの真意は、マシン開発の方向性をこれまでの直線での市販車世界最速を追求するという考えから、サーキットでの走行性能を極限まで高めるという考えへとシフトした点にあるようなのだ。

 

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▶ブガッティの新たな戦略:マシン開発の方向性

ブガッティによると、現行のシロンは最高速度がリミッター作動で420㎞/hに抑えられているが、リミッターを解除すれば、480㎞/h以上を出すことも技術的に可能だという。

 

1,500ps/1,600Nmを誇る8ℓW16クアッドターボの真の実力からすれば、ほぼ2tという巨体のシロンでさえも、500㎞/h近い未知の世界へと誘うことは決して難しいことではない。

 

ディーボにおいては、コーナリングスピードを向上させるべく、トップスピードは380㎞/hに抑えられている。つまり、ブガッティの新たな探究心は、トップスピードではなく、コーナリングスピードに向けられているのである。

 

ブガッティの中で最速のコーナリングスピードを誇るディーボこそ、今後の新たなマシン開発の方向性を象徴するモデルなのだ。

 

ディーボに続くべく、シロンのサーキット志向モデル「シロン スーパーレジェーラ」、「シロンSS」の開発が進められているという。そして、シロン初のオープントップモデル「シロン アペルタ」も同様に開発が進んでいる。もっとも、アペルタは、サーキット志向モデルとなるかは定かではない。7月下旬に発表された「スカイ・ビュー」というサンルーフのオプションに満足できない顧客への待望の一台となり得るだろうが。

 

▶ブガッティの新たな戦略:W16を廃止し、ハイブリッドへ

冒頭でも述べた通り、新生ブガッティは、サーキットで速く走れるクルマを創る。そのためには、軽量化を避けて通ることはできない。

 

そこで浮上したのが、8.0ℓW16クワッドターボの廃止である。つまり、W16エンジンは、現行のシロンやディーボへの搭載がどうも最後となるようなのである。今後、モンスターエンジンがアップグレードされる可能性は極めて低いというのだ。

 

背景には、ブガッティのマシン開発の方向性がトラック志向へとシフトしたことと、今月から欧州で施行が開始された新排ガス規制「WLTP」の厳しさがあるようだ。

 

市販車世界最高速度を記録したモンスターエンジン「W16」は、ヴェイロンに初めて搭載された。当時の最高出力は、今では可愛く思える1,000psだが、当時は世間の度肝を抜いた。そして、ヴェイロン スーパースポーツの登場で、最高出力は1,200psへとジャンプアップし、2010年に431km/hという世界最速記録を樹立した。現在は、スウェーデンのケーニヒセグ アゲーラRSが2017年に樹立した447km/hが市販車の世界最高速度となっている。

 

現在のシロンやディーボの最高出力は1,500psへとさらなる進化を遂げた。名だたるスーパーカーの2倍を超えるパワーを発揮するブガッティは、正真正銘のハイパーカーだ。

 

そんな超俗的なハイパーカーは、サーキットを制するという新たなゴールに向けて、軽量でパワフルな「新しい形のモンスターエンジン」を模索するようだ。現状、W16エンジンの後継の筆頭は、ベントレー ベンテイガなどに搭載されている6.0ℓW12ツインターボエンジンだ。このW12にモーターを組み合わせたハイブリッドのパワートレインが、近い将来ブガッティの心臓部になりそうなのである。

 

ただし、バッテリーが軽量であることが条件になる。それもそのはず、W12に何基のターボを搭載するか分からないが、サーキットを制するには軽量化が必須である。ただでさえ重いバッッテリーは、相当な軽量化が必要である。でなければ、パワートレインの重さが足を引っ張り、W16エンジンと同等のパフォーマンスを発揮することは難しいだろう。

 

そんな中での一筋の光明は、ポルシェとEVハイパーカーブランドのリマックとの技術提携だ。これは、ポルシェがリマックの株式の10%を取得することで実現した。ポルシェ、ブガッティ共に、フォルクスワーゲングループの一員である。ポルシェの最新のEVに投入されるリマックの技術は、新たなハイパーカーを創ろうとするブガッティにとって、とても心強い。業界随一と評されるリマックの高電圧バッテリーの技術がさらに進化し、軽量化を今まで以上に推し進めることができれば、W12 + モーターのブガッティ製ハイブリッドハイパーカーが現実のものとなる。

 

もちろん、デビューした暁には、ラ・フェラーリ、ポルシェ918スパイダー、マクラーレンP1を圧倒するようなパフォーマンスを披露してくれることだろう。

 

そしてさらに興味深いのは、ブガッティ、ポルシェ、リマック、イタリアのシャシーメーカー「ダラーラ」の4社で、EVスーパーカーの共同開発プロジェクトが話し合われているようなのだ。これが実現すれば、みんなが驚くEVスーパーカー、いや、EVハイパーカーが近い将来見られるかもしれない。

 

Photo source:BUGGATI

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