ポルシェは、コードネーム「992」と名付けられた新型911カレラの走行テストを、いよいよ公道で開始した模様だ。
8代目となる992型ポルシェ911は、今年11月に開催されるLAモーターショーでワールドプレミアされる予定だ。
新型911は、これまでの911とは一線を画し、EV版911への架け橋となる存在でもある。
EVスポーツカーを世に送り出すことは、911と共に歩んできたポルシェにとって新たな歴史の始まりであり、2019年発表・2020年発売の「タイカン」は新生ポルシェの象徴的な存在となろう。
しかし、これまでスポーツカーの代名詞であった911は、ヴィンテージスニーカーの如く、これからも長く愛されるスポーツカーであることは間違いない。
それでは、刻々と迫る新型911のデビューに向けて、現在判明している情報をお伝えしたいと思う。
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▶新生ポルシェデザイン
992型の外観について、フロントマスクに大きな変更はなく、ヘッドライトとAピラーが現行の991型よりもわずかに傾斜しており、これまでよりもスポーティな印象を与えそうだ。そして、アウディ譲りの有機ELランプ(OLED)インディケーターやマトリクスLEDヘッドライトが標準装備となるようである。
さらに、アクティブフロントスポイラーが標準搭載されれば、コーナリングと加速の両面で今まで以上の性能を発揮できるはずだ。
フロントマスクは、フォルムは変わらずとも、その印象は随分とモダンというか最先端の精悍さなるものを感じるだろう。
一方のリアはデザインが刷新された。ホイールアーチの延長によって現行よりもワイドになったボディには、ボディの横幅いっぱいに相当ワイドになった「リトラクタブルウィング」が内蔵され、増大したダウンフォースにより、これまで以上に高速コーナリングが愉しめそうだ。
8代目911に採用される新生ポルシェの象徴的なデザインであるテールライトは、「ミッションE コンセプト」で初披露され、「パナメーラ」で初採用され、今後は「タイカン」も引き継いでいく。
ワイドになったリトラクタブルウィングと呼応するかのように、ボディの両端に向かって一直線に鋭く伸びたテールライトは、未来感とスポーティネスを巧みに融合したカッコいいデザインだ。
リアのエアインテークは、現行よりも大型化されており、エンジンのパワーアップを予感させる。エキゾーストパイプは、現行よりもやや中央寄りに設置されるようだ。
911はスポーツカーでありながら、「カエル」のような可愛らしいフォルムを纏い続けている。しかし、いざ911を目の前にすると、可愛らしさというものは一切感じず、ただその完成されたフォルムのカッコ良さに時間を忘れてしまう。
▶デジタルなコックピットと運転支援機能
コックピットは、パナメーラに見られる大型のタッチスクリーンで操作する最新のポルシェデザインが踏襲されており、ボタンやスイッチ類は最小限に抑えられ、整然とした最新のデジタル世界が表現されるだろう。
メータークラスターは、中央のタコメーターはこれまで通りのアナログ式だが、デジタルスクリーンが両サイドに設けられるようだ。
実際にステアリングを握る際には、随分と様変わりした雰囲気を感じることになるだろう。
さて、992型では、いよいよレーンキープアシストなる運転支援機能が導入される予定である。これまで911には導入されていなかったが、自動運転のようにドライバーからドライビングプレジャーを奪うものではなく、安全性を高める技術がゆえに導入されることになったのだろう。
大々的にはアピールすることはないだろうが、今後も安全性やドライバーの疲労軽減をサポートする機能は、積極的に導入されるのではないかと思われる。
▶最新プラットフォームは、スポーツカーのiPS細胞
992型のプラットフォームは、ポルシェが独自開発した最新型が採用される。このプラットフォームは、高剛性のスチールとアルミを組み合わせた軽量設計。そして、最も注目すべきは、極めて優れた拡張性であり、エンジンレイアウトに恐ろしく柔軟に対応する。さらに、ハイブリッドパワートレインにも対応するというのだから、本当によくできたプラットフォームである。
そしてこのプラットフォームは、次世代の718ボクスターやケイマンだけでなく、VWグループの他のスポーツカーであるアウディR8、ランボルギーニ アヴェンタドールやウラカンにも採用される予定である。ミッドシップエンジンとリアエンジンの両方に対応する究極の拡張性を備えたプラットフォームなのだ。
このプラットフォーム1つから、これだけの数の憧れのスポーツカーやスーパーカーが生まれる様は、まるでスポーツカーのiPS細胞。
さらに、このプラットフォーム絡みの話題として、どうも911のミッドシップ化の可能性があると噂されている。その証拠に、ルマン24時間レースのLM-GTEクラスにミッドシップエンジンのポルシェ911RSRというレーシングカーがすでに投入されている。
とはいえ、EV開発を目下の最優先事項とするポルシェにおいて、内燃機関のエンジンレイアウト変更への投資は、後回しないしは棚上げされる可能性が高いと考えるのが妥当かもしれない。
ファンとしては、ミッドシップの911のステアリングを握ってみたいとも思うが…
▶パワーアップ必至のエンジン
992型のエンジンは、すべて水平対向6気筒ターボエンジンとなる。つまり、GT3の自然吸気エンジンがとうとう廃止されてしまうのである。でも、そこはポルシェ。ターボとは思えないカミソリ感抜群の鋭いエンジンレスポンスを実現してくれるだろう。
さて、エンジンのパワーアップは間違いないのだが、どの程度パワーアップが図られるかは、現段階では情報が錯綜している。恐らく、10ps以上30ps以下というのが現実的なところではないだろうか。
992型発売の口火を切る「カレラ」は、現行の370psからいよいよ400psへの大台へ到達するかもしれない。そして同時発売が期待される「カレラS」は、420psから450psへとパワーアップする可能性を秘めている。
組み合わされるトランスミッションは、これまで通りマニュアルとPDKの両方が設定されるようである。PDKについては、7速から8速へと多段化される可能性があるそうだ。
2020年以降に投入が計画されている「911プラグインハイブリッド」は、フラット6ターボにモーターが組み合わされ、700ps以上を発揮する次期911のフラッグシップモデルになりそうだ。モーターは、「パナメーラ4Eハイブリッド」のモーターが採用されるとの情報もあるが、ポルシェはEVハイパーカーブランド「リマック」と技術提携をしているため、今後の911EVを睨んだ911専用のモーターが用意される可能性も十分あるだろう。
992型のスペックについては、11月のワールドプレミアまでは、話題が尽きることはなさそうだ。
▶今後の展開
8代目となる992型ポルシェ911は、11月のワールドプレミアを終えると、年末から来年初頭の間に発売される予定である。まずは、カレラとカレラSが口火を切り、そのすぐ後にカブリオレが投入されるだろう。
そして満を持して、来年の秋頃には、0-100㎞/h加速で3.0秒切りが期待される「ターボ」と、打倒フェラーリ488GTBを掲げるフラッグシップモデルの「ターボS」が投入される見込みである。
▶万能の911ターボ
フランスのシャモニーのスキー場に行った時のことである。スキー場への送迎をしてくれた宿の主人がクルマ好きで話をしていたところ、ヨーロッパのスキー場には、ポルシェ911ターボにスキー板を載せて颯爽とやって来るお客さんがいるという。
宿の主人曰く、「911ターボは愛嬌がないほど完璧なクルマだが、フランスでは四駆は必要ない。でも、911ターボのようなクルマは、フランス人には絶対に造れない」と、潔く諦めた笑顔で言っていた。
ポルシェ911ターボが、いかにオールマイティなスポーツカーであるかを証明する逸話ではないだろうか。
雪が深々と降る冬はスキー場への相棒として、アウトバーンでも物足りなければニュルブルクリンクサーキットで思いっきりかっ飛ばすこともできる。
ランボルギーニやフェラーリのような威圧感の無い見た目は、日常使いでも周りを気にする必要はない。そして、日常使いでの乗心地は快適そのもので、実用性も申し分ない。
しかも、天気のことなんか全く気にする必要がない。
完璧なまでに、万能なクルマ、ポルシェ911ターボ。
これ一台で、クルマに求めるすべての欲求が満たされる。
Photo source:PORSCHE
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