7月12日、マクラーレンは、イギリスの世界的なモータースポーツイベント「グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード」で、総額およそ1兆7,800億円を投じる「トラック25」という大胆かつ攻めのビジネスプランを発表した。
この野心的ともいえる新たなビジネスプランは、2016年のジュネーブモーターショーで発表されたトラック22というビジネスプランをより具体的に進展させたものであり、これから迎えるEV時代に備え、新型モデル、先進技術、そして新たな生産体制についての明確なロードマップを示している。
それでは早速、マクラーレンが描く2025年までのストーリーを見ていくこととしよう。
SPONSORED
SPONSORED
▶これからの新型モデルは全てハイブリッド
マクラーレンは、EVビッグバンの2025年までに、18の新型モデルないし派生モデルをマーケットに投入する計画を立てている。驚くべきは、スポーツシリーズとスーパーシリーズのモデルが、2025年までに全てハイブリッドモデルになると公言していることだ。
もちろん、現行のスポーツシリーズに属する570S、570GT、2日前に正式発表された600LTや、スーパーシリーズの720Sは、今後ハイブリッドモデルへと変貌を遂げることになる。
そして、このハイブリッド化に伴う、マシンの軽量化、高速充電システム、高電圧バッテリーなど、ハイブリッドモデルのハイパフォーマンスに必要な技術開発は、すでに現在進行形とのこと。2025年までに100%ハイブリッド化する計画は、フルEVスーパーカーへの地ならしということなのだろう。
この点、ライバルのポルシェも同様のアプローチを進めている。911のプラグインハイブリッド計画だ。そして、ハイブリッドでワンクッション入れた後、いよいよ、911も完全にEVとなるのか…
▶新型フラッグシップはP1の後継車
マクラーレンのフラッグシップモデルは、アルティメットシリーズのマクラーレンP1の後継モデルが務めることになる。2013年のジュネーブモーターショーで、世界初のハイブリッド・ハイパーカーとしてデビューしたマクラーレンP1は、マクラーレンのフラッグシップとして見事に成功を収めた。
詳細は一切不明だが、P1の後継車であるから、驚くほど軽量でハイパフォーマンスなマシンとなることを期待したい。。
一方で、およそ3週間前、ポルシェがクロアチアのEVハイパーカーメーカーであるリマック社の株式を10%取得した。これにより、ポルシェはリマック社の技術を自社のEV開発に取り入れることで、2020年の「タイカン」投入で本格参入するEVスポーツカーセグメントで、ライバルよりも優位なポジションを獲得しようとしている。
栄光のスーパーカー時代はいよいよ終焉を迎え、来たるべきハイパーカー戦争はもう始まっている。
▶軽量化への探求は終わらない
マクラーレンは、スポーツカー及びスーパーカーセグメントで、最軽量マシンを提供するというブランド価値を今後も堅持する。そのため、およそ74億円を投じて、軽量化技術のさらなる研究開発と製造を行う「マクラーレン・コンポジット・テクノロジー・センター:MCTC」を間もなく完成させ、運用を開始する。
2日前に発表された600LTの軽量ぶりにも驚かされたが、自社の比類なきブランド価値である軽量化の技術をさらに発展させるべく、専用の研究所兼工場を建設する。心血を注いだ自らの強みを生かし、ブランドを育てていく、見事なお手本だ。
▶生産能力2倍のハンドメイド
マクラーレンは、2025年までの間に、18の新型モデルないし派生モデルを投入する。それに伴い、生産能力も今後7年で、75%アップ(現状のおよそ2倍)の年間6000台を生産できるようにする。
もちろん、イングランドのサリー州ウォーキングの工場で、一台一台手作業で組み立てられる。軽量化への徹底ぶりも凄いが、精密なスーパーカーを手組で年間6000台も生産すると聞くと、さすがに絶句する。
マクラーレン流のクラフトマンシップに、ただただ脱帽である。
▶販売力の強化
マクラーレンは現在、世界31のマーケットで、86のディーラーを通じて自車の販売を行っている。
今後さらに増える新型モデルや派生モデルの販売に対応すべく、新しくロシア、インド、中欧、東欧にもディーラーを開設する計画だ。合計100のディーラーを世界中に張り巡らせることで販売力を強化し、トラック25プランの達成を図る。
▶わからないからこそ、攻める
トラック25プランは、大胆で攻めのプランであることがよく分かった。そして、それはかなり大きなチャレンジでもある。
EVビッグバンを控え、外部からはちょっと極端では?と思えるほどの大胆さだ。しかし、そのような大胆さがなければ、EV時代に乗り遅れるどころか、マーケットからの撤退を余儀なくされる。それほどに技術の進歩は急速で、競争は熾烈を極めている。
7年後の2025年、クルマを取り巻く環境は一体どのように様変わりしているのだろうか。
Photo source:McLaren
SPONSORED
SPONSORED